父の誕生日

今日は亡き父の誕生日。毎年この日は綺麗な色のお花を買って、父が好きそうな和菓子を買って、リビングにある「お父さんコーナー」にお供えして、ささやかなお祝いをする。もう亡くなっているので「⚪︎歳の誕生日、おめでとう」という表現はしっくりこないため、大抵は「いつも見守ってくれてありがとう」とか「これからもどうぞよろしくお願いします!」と言ったことを伝える。

「お父さんコーナー」には遺影にも使った父の写真、父のドイツ時代の勤務先のマスコットキャラクターのウサギのぬいぐるみ、ピンクのかわいい造花などを置き、コンパクトながら父と向き合うのにいい雰囲気作りをしている。写真の前には小さなコップがあって、毎日、新鮮な氷水を注ぐ。生前父は氷水をよく飲んでいた。常温水ではなくキンキンに冷やした氷水。だからいまも、真冬でも氷は入れている。その役目は私ではなく主人だ。別にお願いしたわけではない。気づけば自分からやってくれるようになった。そのことが私にはとてもうれしく、ありがたい。

毎朝、主人は出勤時に写真の父に向かって1日の抱負を語る。私は父役になって「身体に気をつけて頑張って」とか「プレゼン、絶対うまくいくから!」などと父の語り口を真似して言ったりする。建前上は「父ならこういうに違いない」ということにしているが、要は私自身の気持ちだ。そして最後に写真の父に「行ってきます」と言って出かける。かなり忙しくても、この工程は外さない。このひとと結婚しなかったら、私はここまでやらなかったかもしれない。父のことを想っていても、いいことがあったときとか、嫌なことがあったときとか、自分に都合のいいときだけ話しかけていたかもしれない。

父は亡くなってしまったけれど、父との関係はなにも変わらないどころか、むしろ強くなったのかもしれないな。

Karin